先週アトランタに向かう飛行機の中でこの本を速読しました。
アトランタ=コカ・コーラというイメージがあり、コカ・コーラといえばバフェットの投資先という連想ゲームで、今回空港でこの本を買いました。
本書は、米国の株式市場に多大な影響力を与え続ける投資家バフェットの生い立ちと、その投資活動の歴史をまとめた本です。
株式投資というと、最近はインターネット取引を駆使したデイトレーディングなどの短期投資が脚光を浴びていて、過去の相場の動きなどを分析して将来を予測する「テクニカル分析」関連の書籍がずらりと並んでいます。
一方、このバフェットの手法は、株式の長期保有を目的とし、企業の財務内容、経営能力を基に、その企業の本質的価値を科学的に把握する「ファンダメンタル分析」に本領があります。
また、一般的に株式投資はリスクを分散するため、多種多業種の株式を組み合わせる、いわゆるポートフォリオを組みますが、バフェットは集中投資を行い、有望を判断した数社のみの株式の大量保有を行う手法をとる特徴があります。
バフェットの投資先となる企業は経営的に健全であり有望であることということは、つまり、バフェットの投資手法を学ぶことは、投資家にとってだけでなく、経営者にとっても非常に勉強になることだと思います。
実際、マイクロソフトのビルゲイツは、経営のアドバイスを求め、しばしばバフェットに会いに行くそうです。
バフェットは、バークシャーという元々繊維事業を行っていた会社を利用して、投資活動を行って自います。毎年この会社の株式総会は、バフェットの話聞こうと多くの人があつまるそうです。この会社の年次報告書である「会長からの手紙」から、バフェットの投資哲学を学ぶことができます。
英語ですが、以下のサイトから無料で入手可能です。
http://www.berkshirehathaway.com/letters/letters.html
バフェットは、自分が理解できない分野には投資をしないそうです。ハイテク、ITには投資せず、自分でも事業が理解できる「オールドエコノミー」にのみ投資を行います。彼のいう「イネビタブルズ」、十年後も二十年後も確実に存在する事業を好んで投資をします。
その例が、ディズニーであり、かみそりのジレットであり、そして、コカコーラです。バフェットは、株式を買うというより、自分が惚れ込んだ企業そのものを買う感じが強く、実際彼は、チェリーコークの大ファンで、片時もチェリーコークを放さないそうです。(個人的には、あんなにまずい飲み物はないと思いますが・・)
1988年コカコーラ株取得を決めた理由には、もちろんチェリーコークのみが理由ではなく、財務的な魅力的あったからです。コカコーラの場合、株式時価総額が、バランスシート(貸借対照表)上の純資産の6倍に達していて、この見かけだけでは、価値を見出すことがまったくできない状態でした。
しかし、バフェットはこのバランスシート上には現れていない膨大な価値を見出していました。 それは将来のキャッシュフロー(現金収入)です。将来のキャッシュフローの現在価値が、
市場価値を大きく上回っていると算出したのです。 また、バフェットの用いるキャッシュフローの定義は、一般に用いるものと少し異なっていました。
当時一般的には、税引き後利益に減価償却費などを加えた現金収入を用いますが、バフェットは、事業に必要不可欠な設備投資への支出を差し引いたものをキャッシュフローと見なしました。そして彼はこれを「オーナー利益」と呼び、企業評価の指標として用いていました。
(これは、1990年代には、フリーキャッシュフローとして知られるようになった。)
コカコーラのような飲料事業は鉄鋼事業や自動車事業を違い、それほど設備を必要とせず、設備更新などの多額の投資負担の必要がなく、オーナー利益を高く見積もることができ、またコカコーラは1980年代半ばに保有する瓶詰め業や物流部門を関連会社に売り渡したため、設備投資の負担から解放され、浮いた資金をマーケティング等に投じられる体制を整えていました。
日本では意識がうすく株主より経営者側の利益が優先される傾向が強いですが、本来、株式会社である企業は株主への価値を創造する目的があります。コカコーラはこの株主価値創造の
目標指標として、EVA(経済付加価値)をいち早く導入した会社です。このEVAを理解するには、「資本コスト」を理解することが必要です。企業の資本は、銀行借入れや債権発行などで調達する負債資本と株入主から預かる株主資本から構成されています。
負債資本には金利がコストであり、株主資本のコストは、株主が期待するリターン(配当や株価上昇)がコストです。この負債資本コストと株主資本コストを加重平均計算したものが「資本コスト」ということになります。
日本では株主資本のコストはただ同然と勘違いした企業が多いですが、本来負債コストの債権者より株主資本の株主のほうが、企業倒産時の資金回収リスクが高いため、資本のリターンは債務資本より高いはずです。
コカコーラはこの資本コストをきちんと把握し、そのコストを上回るリターンを生み出す事業へ集中投資し、そうでない事業からは撤退する方針を決めるといった、「集中と選択」により、EVAの増大を図っていきました。
また、余剰なキャッシュフローは、本業以上に大きなリターンを見出す事業がないと判断する際は、自社株買いを実施し、株主へ資本を還元しておくことで株主への価値を増大させる方針をとっていきました。
コカコーラの宿敵といえば、ペプシですが、「コーラ戦争」はコカ・コーラの圧勝で終わった」とアメリカでは認知されているようです。事業規模ではペプシはコカコーラを圧倒し、従業員は14倍、総資産では6割も大きいですが、株主へのリターン(ROE)は、ペプシが20%に対して、コカコーラは60%に達する高収益企業になっていました。(1996年)そして、株価の時価総額は、ペプシの3倍です。
つまり、コカコーラは、ペプシよりも圧倒的にすくない資本と労働力を使いながら、数倍の富を創造していたということです。この大差は、ペプシが多角化経営をする一方で、コカコーラは、本業以外以上にリターンを見出さない事業から次々と撤退した「選択と集中」戦略によるものである。
私自分自身が、今は小額でちょこちょこと勉強を兼ねて株投資をしています。 まずは投資家になる前に、経営する立場でまず事業を成功させ、その過程で、企業の財務や経営能力の本質的価値を見極る能力を身に付ければといいなと思います。本格的に株の投資ができるステージがきた際は、バフォットのように長期保有を目的とした投資活動をしたいと本書を読み感じました。
2006年01月20日
最強の投資家 バフェット - 牧野 洋 -
posted by IZ at 03:07| 書籍