2007年10月16日

【 影響力の武器 】 (著)ロバート・B・チャルディーニ

「何か決定を下すとき、私たちは利用可能な関連情報をすべて利用するわけではなく、全体を代表するほんの一部の情報だけを使う。説得のプロはそれを利用し、相手に影響力を与える引き金を忍ばせ、成功率を高めている。」

本書では、セールス、広告、募金活動などの事例を挙げ、相手から承諾を引き出す戦術を紹介。
その戦術を6つのカテゴリーに分類し、人間の行動心理学の原則を基に解説した書籍です。その6つのカテゴリーを要約すると、

■ 返報性 (reciprocation)
親切や贈り物、招待などを受けると、そうした恩恵を与えてくれた人に対して将来お返しをせずには
いられなくなる気持ちを利用するもの。

例えば、無料試供品を配布する販売推進員は、表向きは製品の存在を知ってもらいたいという振りをしているが、実は、贈り物につきものの報恩の義務を利用して買わせようとしている。

これをさらに進んだテクニックとして、「拒否したら譲歩」法という、別名「ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック」がある。これは、まず確実に拒否するような大きな要求を出し、それを拒否した後、それよりも小さな元々受け入れて欲しいと思っていた本当の要望を出すというもの。要は、最初の要望が拒否されてその要望を引き下げることが譲歩に見られるため、相手がその譲歩に返報しなければならないと感じる圧力に依存しようというやり方。

■ 一貫性 (consistency)
自分が既にしたことと一貫していたい(そして一貫していると見てもらいたい)という気持ちを利用するもの。人はひとたび決定を下したり、ある立場を取ると、そのコミットメントと一貫した行動を取るように、個人的にも対人的にも心理的圧力がかかる。

これを利用した販売戦略として、クリスマスプレゼントの例がある。ある玩具メーカーはクリスマスの前から、ある特別なおもちゃのコマーシャルをどんどん流し始め、当然子供たちはそれが欲しくなる。そこで両親にクリスマスプレゼントとして買ってもらう約束を取り付ける。しかし、玩具メーカーはクリスマス前にはそのおもちゃを少ししか卸さない。そして大半の親はそのおもちゃが売切れてしまったことを知り、他の類似したおもちゃを代わりにクリスマスプレゼントとして買わざるを得ない。もちろんメーカーは代替品を十分に卸しておく。

そしてクリスマスが終わると玩具メーカーは再度そのおもちゃのCMをどんどん流す。子供たちは前以上にそのおもちゃが欲しくなり「買ってくれるって約束したじゃないか」と親に訴え、たいていの大人たちは自分の言葉を裏切りたくないから、その玩具を買い与えてしまう。結果、玩具メーカーは、おもちゃを1つ余計に売ることに成功する。

■ 社会的証明 (social proof)
自分にとって何が適切な行動であるかを決定する際に、人は他者の行動を手掛かりにする傾向があり、それを利用するもの。特にその他者が自分と似ていると思う場合や状況が不確かで自分に確信がもてないとき、この傾向が強くなります。たとえば、お笑い番組の「笑い声」の挿入もこの心理を利用して笑いを起こさせようとするものであるし、「自然なインタビュー」を装って撮って一連のやらせCMを作るというのも、この力を利用しようというもの。 

■ 好意 (liking)
人は自分が好意を感じている知人に対してイエスという傾向があることを利用するもの。この「好意」に影響を与える要因として、「身体的魅力」と「類似性」とがある。「身体的魅力」はハロー効果を生じさせ、「見た目の良さ」が、才能や親切さや知性など他の特性への評価も高める傾向があるというもの。「類似性」は、自分と似た人に好意を感じ、そのような人の要求に対してはイエスという傾向が強いというもので、例えば、セールスマンなどは、自分とクライアントの経歴や趣味が似ていることを強調したりすることも、この心理を利用しようとするもの。

■ 権威 (authority)
権威あるものからの要求に対しては、服従しなければという潜在的な心理的圧力を利用しようとするもの。これは、必ずしもその権威の実体がなくとも、権威があるように見せかけるもの、例えばシンボル(肩書き、服装、装飾物)に反応してしまう傾向がある。人はある分野の権威に見える人の言うことなどを盲目的に受け入れてしまう傾向があり、有名な先生の言うことだから、間違いはないだろうとか、プロの間でも愛用されている商品だから絶対にいいと思うのも、この心理が適用されている。

■ 希少性 (scarcity)
人は機会を失いかけると、その機会をより価値あるものとみなす傾向があり、この心理を利用するもの。その原理を利益のために使う技術として、「数量の限定」「最終期限」などがよく使われる戦術。今だけ限定商品などは、まさにこの心理を利用した販促活動。その希少性の原理が最も働く条件は、新たに希少なものになった時で、既に制限があるものより、新たに制限にあったときに、また、他人と競って求めているとき、もっとも価値が高く感じられる。 


紹介されている事例や行動心理学の実験内容がとても面白く、食い入るように読んでしまいました。 最近巷でよく出版されている、営業・マーケティング、交渉術のノウハウ本で紹介されている心理学的手法の多くは、本書がベースになっているのではないかと思います。

ビジネスで役立つインサイト満載の書籍です。本書で説明されている承諾誘導の「引き金」を知り、相手からの承諾を得るためのヒントを学ぶと共に、捏造されたインチキな「引き金」に対抗するためにも、何度も読み返えす価値ある1冊です。

posted by IZ at 01:49| 書籍