2007年11月14日

【 達人のサイエンス 】 (著)ジョージ・レナード

「人生とはプラクティスであり、終わりなき学びの旅である」

さまざまな領域の「達人」(マスター)と呼ばれる人々は、みずからの精神と肉体をどう鍛練しているのか?

一生涯にわたって自己成長をとげるための優美な人生修業のセオリー、「マスタリー(熟達)への道」を明らかにした名著です。
本書の内容は、

マスタリーとは、「達人」への過程であり、案内図、地図などのない旅である。マスタリーの旅は、予想外の苦労を伴い、決して「最終的な目的地」に到達することはない旅である。しかも、その過程では、必ず「プラトー」と呼ばれる、伸び悩みの時期にぶち当たってしまう。

このマスタリーの旅を続けるには、自己の技術を磨き上げ、常に次の段階の能力を得ようと勤勉に練習しなければならない。さらに、かなりの時間をプラトーで過ごすことになり、その間はたとえ先が見えなくとても、練習を続けてなければならない。これが、マスタリーの旅の厳粛な事実なのである。

〜マスタリーの道から脱落するタイプ〜

このように、マスタリーの道のりは長く、簡単に成果が得られるようなものではない。その結果、人はだんだんと別の道を探し、それぞれのタイプによってわき道に逸れて行く。
そのタイプは、大きく3つに分類される。

ダブラー: ミーハー型で、心があちこち移ろいやすいタイプ。初めは急に上達をし、すぐに有頂天になる。その上達が一息ついて、プラトーに直面すると、その原因が分からなければ我慢できなくなって、熱心さは急速に失われる。このときダブラーの心は、なんとかして自分を正当化したいという気持ちでいっぱいになり、最初に味わったものをもう一度繰り返したくなり別のものを始めてしまう。

オブセッシブ: せっかち型で、考え方が偏狭でゆとりのないタイプ。現実主義で、重要なのは結果であり、ゴールへ至る方法など問題にせず、成果をすばやく手に入れることに専念する。オブセッシブは、最初から凄い勢いで上達する。だがやはり後退期が来て、自分がプラト−にあることが分かると、それを受け入れるのが耐えられず、いっきに転落が始まる。

ハッカー: のらりくらり型。意気地がなく熱心さに欠けるタイプ。 ちょっとでも上達のコツを飲み込むと、プラトーに長く留まっても苦にならない。

〜マスタリーの旅を邪魔する現代社会の弊害〜

現代人の生活スタイルが、達人の旅の障壁となっているとも言える。従来、価値基準というものは、親族・家族・部族などの考え方や伝統的な学校教育などによって決まっていた。しかし、現代社会では、消費者を飽くことを知らない消費に掻き立てることを当たり前とする経済システムが中心となっている。

コマーシャルなどを見ていると、すべてに共通したパターンがあることが分かる。それは、コマーシャルの半分は、その題材に関係なく、ある種「クライマックス」に基づいている。テレビの番組では空想物語が、何の努力もなく簡単に実現する。そこでは、毎日が特別な日であり、空想が次々と実現し、クライマックスがいやというほど続く。そこに、「プラトー」は存在しない。結果、人生とは何よりもまずクライマックスの連続でなければならないという考えをしてしまう傾向に陥る。

それに対し、マスタリーとは、即座の結果を求めない、不断の努力に支えられた忍耐の道なのである。自己を明け渡し、結果を得ることを目的とぜず、練習自体を愛し、鍛錬を続けていく。それは、人生のプロセスそのものであり、言い換えれば、マスタリーの道は、過去でも未来でもなく、ただ「今」を愛する「現在」にのみ存在するものといえる。

〜抵抗勢力「ホメオアウタンス」〜

マスタリーへの道のりで、よい方向へ変化していく中でも、必ず後退が始まる。人は、大幅に変化すると、それが後退であれ前進であれ抵抗を受ける。なぜなら、我々の体や脳、行動には、変化の状態から元に戻ろうとする傾向が本来備わっているからである。この変化に対抗して平衡状態を維持しようとする働きを、「ホメオアウタンス」(恒常性)という。ホメオアウタンスの問題なところは、現状があまりよいものでなくても、それを維持しようと働き続けてしまうことである。なぜなら、ホメオアウタンスは、その変化がいいのか悪いのか区別ができなく、どんな変化にも対抗するからである。

このホメオアウタンスに対処するポイントとして、@その抵抗とゆり戻しをあらかじめ想定しておく A二歩進んで一歩下がる状態をいとわない心構えをもつ B可能であれば、自分一人でなく変化にともなう喜びと危険をともに分かち合える仲間を作る C規則的に練習・鍛錬を続けるよう習慣化し、変化という不安定な状態の中にあっても安定するベースを作る D「自分が変わる方法」を生涯学び続ける、というものが挙げられる。

〜達人へのエネルギー〜

マスタリー的な生き方に専念するための「エネルギー」がないという人がいる。だがエネルギーはそもそも使うことで現れるものであり、またそれは保存が効かないものである。マスタリーのエネルギーを得るためには、まず肉体の健康を維持すること、積極的な思考・態度をもつこと、優先順位を決めること、公言して、実行することなどを心掛けるとよい。そして、なによりマスタリーの道を歩むことこそ、エネルギッシュな生き方をもたらしてくれる最大のものなのである。

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芸術やスポーツなどに限らず、ビジネスでも学問でもある分野の達人になるためには、その過程で、必ずプラトーと付き合わなければならない。それが達人の域に到達するための不可避な過程であると認識しておくことは、諦め放り出したくなる心への大きなストッパーとなり、持続的な努力を促してくれる。

自分にとって、これだ!と思った分野を徹底的に極めていく、その過程こそが、充実した人生を作り上げ、その終わりなき鍛練の中にこそ、人生の意味が存在する。

かなり哲学的ですが、壁にぶつかったとき大きな励みを与えてくれる一冊です。

posted by IZ at 01:57| 書籍