2008年04月10日

【 経営の構想力 】 (著)西浦祐二 氏

もう一度読み返したい本:
【 経営の構想力 】 (著)西浦祐二 氏


「白鳥の群れが湖を飛び立つ時、まず1羽が群れの中から飛び立ち、他の白鳥はそれに続き一斉に飛び立つ。 その1羽の白鳥が、飛び立つタイミングや方向性を決めている。 最初に飛び立つこの一羽こそ、まさに「構想者」に他ならない。」

構想力とは

■ 環境の変化が激しい現在、企業経営者、あるいはビジネスリーダーと呼ばれる人たちの重要な要件の1つは、「方向性を決めること」である。

■ この「方向性を決める」時に拠り所となるのは、主に3つある。それは、経験などから築き上げた人生観、世界観といった「哲学」、大きな流れや本質を見抜く、「大局観・洞察力」、そして、大胆ながら細心さを兼ね備える「現実に対する勝負勘」である。

■ 本書では、これら3つを総合したものが、「構想力」という概念を意味する。

■ この「構想力」は、「想像力」とは異なる。 「想像力」が「心に描くだけ」に対して、「構造力」は、「何かを産み出そうという意図」がある。つまり、構想力とは、見えないものを見て、想像するだけではなく、行動につなげ、行為を通じて新しい価値へとつなげるものである。

■ 例えとして、白鳥の群れが湖を飛び立つ時の「飛び立ち方」が面白い。 白鳥は、まず1羽が群れの中から飛び立ち、他の白鳥はそれに続いて一斉に飛び立つ。 最初に飛び立つ白鳥は、向うべき地や風向きなどをすべて考慮し、自ら構想し飛び立つタイミングや方向性を決めているのだろう。 この最初の一羽こそ、まさに「構想者」に他ならない。

構想
編集

■ どうすれば「構想」が生み出されやすくなるのか。 それには、「編集」という行為が必要となる。「構想する」という行為は、無から有を生む行為ではない。すでにある材料が頭にあり、それらが統合され、新しい考え方を生み出すのである。つまり、「構想」が生まれる際には、「編集」という行為がきわめて重要な役割を果たしている。

■ そもそも我々は日常で、その場の状況等によって情報を「編集」して生活している。いわば、編集は人間の活動に潜むもっとも基本的な情報技術といえる。

■ しかし、その基本的な情報技術であるにも関わらず、誰しもが優れた編集を行えるとは限らない。

■ この編集力を妨げる要因は、大きく「思い込み」と「組織の壁」である。

■ 「ネオテニー」という言葉があるが、これは「幼い時期の特徴を失わず成熟すること」を意味する。人は残念ながら年齢とともに体も頭も硬くなり、「思い込み」が強くなる。「大人」になる過程で、ネオテニーを失っていく我々は、目の前の場面・情報に分析的に接し、可能性でなく問題点にばかり目についてしまう。分析的な姿勢でなく、純粋に体で感じること、とらわれない眼で観察することを心掛けることが重要である。

■ もう1つ「組織の壁」による問題意識や発想の制約もある。これは、知恵が部門という箱の中に閉じこもり、他の部門との知恵の化学反応が起きず、より大きな知恵が生まれてこないことによるもの。常に「各論」に浸り切って全体像のないまま目の前の課題と仕事を追いかけるだけに終始してしまっている。

■ 「構想」と「編集」とが密接な関係にあるのは分かったが、この「編集する」行為と「構想する」行為は、何が違うのか。それは、「編集」には、「凝集する」というニュアンスが強い。対して、「構想」という概念は、「跳躍する」とか「大きく広がる」という意味が込められている。

■ つまり、「編集」とは、「構想」を生み出すために必ずなければばらない前工程であり、「構想」を支える行為である。その前工程の出来具合によって、構想の幅が決まってくる。この前工程で実際に「構想」につながる「創造的な飛躍」が頭脳の中で行われる。それは、「化学反応」の結果生まれる思考エネルギーの爆発といっていい。


現場
の視点と大局的な視点

■ さらに、「構想力」を生み出すには、「現場の視点」と「大局的な視点」との融合が必要である。

■ 「現場の視点」とは「現場の気づき」であり、その気づきが発想につながり、発想が構想を生み出す。多くの新商品や新事業はこうした現場の気づきが出発点となっている。この現場の視点を磨くには、@、明確な問題意識をもって、頻繁に現場に顔を出すこと A「現場の力」の棚卸し、強み・弱みなどを評価してみること B顧客の視点に立ち、現場と共に「満たされない顧客のニーズ」を洗い出す作業をすること、などが挙げられる。

■ 「大局的な視点」とは、目先の変化に惑わされず、「大きな流れ」やその流れの奥底にある「本質」を見る眼のことである。ビジネスマンにとって、細かな知識や情報が必ずしも必要ないが、歴史流れや世界情勢を、鳥瞰図的に眺める癖を身につけることが大切。それにより、今我々がいる位置やこれから向かう方向が見えてくる。


構想力」を高める仕組み

■ 「構想力」を高めるための組織的な仕組みができれば、構造力が豊かな個人も活かすことができる。 そのために求められるのは激しい「知の格闘」である。これは、「ナレッジマネージメント」の考えにつながる。

■ このナレッジマネージメントの目指すべきところは、「知識や情報の流れを作り出し、それを循環させ、新しい価値を生み出す環境を提供すること」である。しかし、その仕組みづくりはなかなか成果を上げていない。

■ その原因として、3つの誤解がある。1つ目は、「ナレッジとは何か」という点。つまり「ナレッジや知恵」と「データ」や「情報」との違いが明確化されていないというところである。 本来「データ」に意味が与えられると「情報」となり、その「情報」をどのように活用するかが知恵」である。単なる「情報」の共有化から、本当と意味での「知恵(ナレッジ)」の共有化が必要である。 

■ 2つ目は、「ドキュメントを電子化すればいい」という誤解。「知恵」やデジタル処理できない部分があるし、電子ファイル化しても、それだけで組織内での活用は難しい意。「情報系」だけに偏らず、社内運動、知恵編集など「人間系」の工夫が不可欠である。

■ 3つ目は、「ナレッジマネジメント現場の知の共有化であり、経営者が関わるものでない」という誤解。 経営者が「大局的な視点」や「理念」を現場に投げかけることでベクトルの揃った知の生成が可能となる。また、現場の知を経営者自身が学ぶことで、現場のナレッジが「経営の知」に昇華される。これらの理由から、経営者も深く関与すべきである。

■ このように、「大局的な視点」と「現場の視点」がうまく融合して、目指すべきナレッジマネージメントの仕組みが出来上がる。そして、この2つの視点こそが、一人のリーダーの構想力を高めていく。



■ 混乱の時代に、「構想力」はこれから向かうべき方向性を指し示す「羅針盤」であり、ビジネスリーダーとって必須の能力と言える。 そして、その構想を自らの言葉で語れるコミュニケーション能力、新しいものを作り出し、その価値を再生産していく仕組みをつくるマネジメント力があって、初めてリーダーとしての役割を果たすことが出来るのであろう。

= = =

内容は経営層向けのハイレベルな視点になっていますが、容易な表現で読みやすく書かれています。大枠の抽象的な議論の中にも、具体的なエピソードもいくつも盛り込まれています。

構想力」を「編集力」と重ねて論じている点がとても興味深いです。
構想力」という言葉はいろいろな意味でよく使われていますが、その言葉の意味を再度自分なりに解釈し、「構想力」という切り口からビジネスリーダーのあり方について考える良い機会を与えてくれる1冊です。

 
posted by IZ at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍
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