会議には目的に応じていくつかのタイプがあり、それらを1つの会議に混在させてしまうと、ただ集まったことに満足する形だけの会議になってしまうことがあります。
以前外資系のグローバル企業に勤めていた時、アジア各国(日本、中国、マレーシア、オーストラリア等)との間で、週に一度電話会議をしていました。
その会社はとてもデータを重んじる会社だったので、売上・利益以外にも、さまざまなオペレーション指標(納期日数、誤品・欠品率、クレーム数、コールセンター入電数など)を設けて、その数値を週単位でレビューをしていました。 それぞれの指標の目標値に対して、毎週達成しているかどうかを確認し、達成していなければ、問題を分析して原因を特定し、解決策を検討し即座に取り組みます。 これらの具体的な実務は、国内の関連部署のマネージャー間での会議で調整され、その進捗を互いに報告・管理していました。
一方、先のアジア各国間のミーティングは、業務の標準化がグルーバルで進む中、国間でのコミュニケーションを活性化し、共通する問題の解決策や成功事例(Best of Breed) をシェアしようという目的でした。
ところが、いつの間にかその会議では、指標の数値のみを追っかけ始め、その週の数値が悪かった国を他の国が責め、数値の悪い国の代表が、その場しのぎで解決策を必死で説明するという会議に変容してしまいました。 私も日本の代表として毎週その電話会議に出席していく中で、そのミーティングの本来の意味を見失い、参加することによる実質的なアウトプットのない形式的なミーティングに呑まれていきました。
ある時、アジアの統括ディレクターがたまたまその電話会議に参加して我々の議論を黙って聞いていました。すると会議の最後に、「この電話会議の目的は、互いの成功事例をシェアすることだろう。君たちは、さっきから互いの問題を突きあっているだけだ。そんなことはナンセンスだ!」 私はハッとしました。 確かに限られた時間で、言葉も100%は伝わらない各国レベルでの話し合いで、問題の分析→解決策検討→アクション!ç†">進捗管理までするのは、そもそも無理があり、実際そこまでお互いにコミットしていない。 それであれば、お互いの国でこういうことを試してみたら、うまくいったということを教えあった方が全然生産的です。
例えば、会社で「ブレスト会議」をやったことがある方は多いと思いますが、 実際には「アイデアを発散させる会議」、「そのアイデアを評価・検討する会議」、「実行計画を立てる会議」、この3つの別々の目的をもつ異なるタイプの会議をごっちゃにして行っているケースが結構あるのではないでしょうか。
「自由な発想でブレストしてみよう」などといってるリーダーが、メンバー各々の発言に対して、「それは非現実的だな」などといちいち評価したり、メンバー同士が「それは誰がやるんですか?」など実行計画ことを考え、結局発言することにリスクを伴うを雰囲気が漂い、誰もが口を開くことを躊躇し、脳がフリーズしてしまう。
もちろん「自由な発言をどうぞ♪」と言われても、会社組織のメンバー同士、「的外れなこと言ったらどうしよう」という恐れや「考えを整理してうまいこと発言しよう」と力が入ってしまうことは人の心理として自然です。 ただし、本来「ブレインストーミング」というぐらいなので、脳に嵐が吹き荒れたように、半狂乱状態で狂ったように考え、発言する状態に持っていかなければ、本当の意味でのブレストの効用を享受できません。
そのためには、リーダー自ら、とぼけた発言を連発し笑いを取り、「おもろい発言をしたもん勝ち!」くらいの雰囲気を作ってしまうというのは良い手です。アイデアの質ではなく発言の数を競い合い、「各々の発言に対しては、『それいいね〜』としか言っちゃいけないルール」を設けて、アイデアを発散させるブレスト会議をやってみましょう。 そのあと、いったんブレークを取り、改めて今度はロジックを用いて、大量に出たアイデアを評価・検討していけばいいのです。
会議の目的を区別し、意識すること。会議はその目的に応じて別々にセットする。 これが単なる集まりではなく、アウトプットのある会議が生まれる肝ではないでしょうか。