2009年04月14日

「要するに」は、要注意!

「要するに○○ってことでしょ。」 

私たちコンサルタントは、物事を一般化してパターン認識するのが好きな人種らしく、人の話を聞いて、最後にこう纏めたい欲を抑えるのが難しいようです。


しかし、相手の話したことの要点をうまいこと抽出し、一般化しまとめることは、常によい結果をもたらすとは限りません。 

まず対話において、話し手が一生懸命いろんな話を交えて説明するも、最後に相手からあまりに単純化されて「要は○○ってことでしょ」と言われると、たとえそれが要点は得ていても、何か不満感が残るかもしれません。 そして、 何よりも、いつも「要は○○でしょう」で済ませる習慣(反応)は、聞き手の持ち得る世界観を制限してしまいます。 

私たちは、無意識レベルにおいて、心の中で「メンタルモデル」を形成します。これは、私たち一人ひとりが心で持っている内的な世界観のことです。そして、現実の外的世界から五感を通じて知覚した情報を、そのメンタルモデルで理解できる形にフィルタリング・歪曲された上で受け取ります。 

同じように、意識レベルでも、自分の既に知っている過去の情報と照会しながら、私たちは物事を理解しようとします。 「要は○○」というのも、相手から聞いた話に一番近い自分の経験・知識にアクセスして、そこから抽象化して纏める行為をしているに過ぎません。 

最近注目されているオットー・シャーマー氏の「U理論」においても、人とのコミュニケーションにおける聞き方の深さに関して、4つのレベルがあると説明しています。
 

  1. ダウンローディング する (Downloading)

    (既に知っていることを再確認している聞き方)

2. 事実に基づく (Factual)

    (自分にとって新しいデータに焦点を当てる聞き方)

3. 共感する(Empathic

     (相手に感情移入した聞き方)

4. 生成的 (Generative)

  (深い根源とつながり、最善の可能性と真の自分を感ている状態)


「要は○○・・」とは、このうちの、まさにレベル1の深さが浅い「ダウンローディング」に過ぎません。これだけでは、すでに知っている枠組みから脱する機会を失ってしまう可能性があります。より深いコミュニケーションで、相手との対話から深い気づきや創造的な発見を得るには、レベル3、4の姿勢が大切で、自分の知っているものとの照合による理解だけでは十分ではありません。    

「要は○○・・」と言いたくなったときに、そこでまとめることにより新たな気づき・発見という価値を失う可能性があることを思い出しましょう。 試しに「要するに」「要は」をしばらく禁止してはどうでしょう!
posted by IZ at 01:01| コラム