それは、一人一人見えているものが違うからです。
そして、使う言葉1つ1つの持つ意味合いも、人それぞれだからです。
特にプロジェクトの最初の段階は、抽象的な言葉を使って、
コンセプトや目的などを話合い共有することが多くあります。
その時点で、既にミスコミュニケーションの原因が潜んでいます。
「地図は、領土ではない」
これは、一般意味論を提唱した、アルフレッドコージブスキーの言葉です。
地図というのが、物理的な領土(土地)を抽象化した概念であるように、
言葉も私たちの「体験」を一般化した概念の記号に過ぎません。
地図が領土そのものではないよう、たとえ同じ言葉を使っていても、
その背景にある体験は、一人一人異なります。
特に抽象的な言葉は要注意です。
だからこそ、プロジェクトの初期段階には、抽象的な内容と
具体的な話を行き来させ、意味するところを互いに確認し
共有することが大切になります。
さらに言えば、言葉どころが、人によって同じものを見ても、
体験そのものが異なります。つまり、見えているものが違うといいます。
これは比喩ではなくて、本当に脳科学的な実験でも確認されていることです。
実験では、ネコの視覚を調査します。縦シマしかない部屋でネコを育てると、
そのネコは縦シマしか見えなくなるそうです。
これは、脳内に縦シマに反応するニューロンだらけとなり、横シマに反応する
ニューロンが増えないからだそうです。 だから、この縦シマしか見えないネコの前に、
横向きにつっかえ棒を置いておくと、足元でつまずいて転んでしまうそうです。
最近物凄い勢いで本を出版されている脳機能学者の苫米地さんも、
その人にとって見えない部分を「スコトーマ」という言葉で説明されています。
人はその人にとって重要なものしか見えない。
自分に重要でないものは、盲点となり見えなくなってしまう。
これは、先のネコの例で考えてみると、ある期間偏った限られた
情報のみの環境にいると、それ以外の情報には意識が行かず
反応するニューロンが少なくなり、見えなくなってしまう。
これを、企業で考えると、同じ組織環境に長くいる社員は、
いつもの限られたものしか見えないという
恐ろしい現象が起るのかもしれません。
プロジェクトベースの仕事は、多様なバックグランドの人が集められて
始めることが多々あります。 使う言葉に対する意味合いの相違、
さらには、意識として見えている世界が違う人たちとの間で、
ミスコミュニケーションが起きる要因は大いに内在しています。
そのことを肝に銘じて、初期から理解の確認・共有を図ることが
大切なのだと思います。